【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】 第11回 ソレア

2024.10.1

★Comentario
 深みを具えた12拍子、「ミの旋法」、そしてそこに歌い込まれた人生模様……あらゆる意味で、もっともフラメンコらしいと言ってさしつかえないのが、ソレアかもしれない。そのため学者や愛好家はこの曲に、「歌の母」の称号を与えた。そこから発展して、「フラメンコの母」と呼ばれることもままある。綴りはSoleáで、これはSoledad(孤独)がアンダルシア式に転訛したもの。元のアクセントの位置を明確にするため、最後のaの上に臨時のアクセント記号が打たれている。古くはsolearesと複数形で書かれることもよくあった。
 コンサート・フラメンコ・ギタリスト、マヌエル・カーノによれば、初めて文献に「Aire popular de Andalucía(アンダルシアの調べ)」として現れた1曲、名ギタリスト、フリアン・アルカスが奏でたこの曲が、ソレアのルーツだという。また歌としては、独特の味わいを持つ踊り歌ハレオが大元になったとの説がある。ともあれ、アンダルシアそれぞれの街に特徴的なソレアが生まれ、アルティスタが誕生していった。トリアーナのラ・アンドンダ、ウトレーラのラ・セルネータ、アルカラのエル・デ・ラ・パウラ、カディスのエル・メジーソ……彼らの残した歌は今なお受け継がれ、土地の香りとともにフラメンコの根源的な匂いを運んでくる。