【寄り道手帖】サンティアゴ巡礼

2022.01.7

 

 9世紀初頭、ある夜、羊飼いが星に導かれてキリストの弟子ヤコブの遺骨が納められていた洞窟を発見したのが始まりだった。  それは、最初は小さな祠みたいなものだったのかもしれない。

 やがて、その場所に大聖堂が建てられ、キリスト教徒達は王侯貴族から平民に至るまでこぞってスペイン北西部のサンティアゴ・デ ・コンポステーラを目指すようになった。
 12世紀に最盛期を迎えたサンティアゴ巡礼ブームはその後、紆余曲折あって、一旦は下火になったものの、20世紀終わりに、再び脚光を浴び始め、今では世界中からたくさんの巡礼者達がこの地を目指して歩くようになった。
 全ての人に開かれ、信仰の種類も問われないサンティアゴ巡礼路は、バックパックを背負った人々の国際交流の場にもなっている。
 現在の巡礼は決して命がけの旅ではないし、人々の信仰心も昔のように鮮明なものではなくなってしまった。
 それでも、大きな荷物を背負って聖地を目指す彼らの姿を写真におさめる時、それが彼らの人生そのものに思える時がある。
 朝日を背に受けながら歩き始め、やがて夕日が沈む西の地へ辿り着く「フランス人の道」。
 それこそ、人間が生まれてから死を迎えるまでの長い旅路を暗示しているからだろう。

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近藤 佳奈
1973年三重県生まれ。埼玉県在住。美術学校卒業後、画家として活動。
2002年に創作活動を停止、その後、産業機器メーカーにてOAオペレータとして14年間勤務。
15年、ミラーレスカメラの購入をきっかけに写真を撮り始め、16年よりGARLOCHIのオフィシャルカメラマンとして本格的に活動を開始。
18年、19年、21年にスペインのサンティアゴ巡礼路“フランス人の道”と、聖地サンティアゴから更に西の海岸へ向かって歩く“フィステーラ、ムシアへの道”、合計約900キロを3回に分けて歩き進みながら、撮影を続ける。

◆写真展情報◆
2022年1月5日(水)〜17(月)
※火曜休館 最終日は14時までFUJI FILM Imaging Plaza 大阪ギャラリー 近藤佳奈写真展「ULTREIA」サンティアゴ巡礼2018〜2021