【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】 第15回(最終回)ファルーカ

2025.10.1

★Comentario
 「カンテの泉」最終回を飾るのは、ラストにふさわしく、本誌の名前を冠した曲ファルーカだ。ラストにふさわしく、というとゲームのラスボスか何かのようだが、こちらはそんな恐ろしいものでも、おどろおどろしいものでもない。むしろ昨今の日本と同様、たいへんな暑さにあえぐイベリア半島にあって、昔ながらの湿潤な気候を保ち、訪れた人にほっとひと息つかせてくれる土地……そして、刺激が強くオイリーな食事に胃腸が疲れてきたころ、「美味しいものが食べたければcasa gallega(ガリシア料理)と書かれた看板を探せ」といわれるほど、胃腸にも心にも優しい料理を提供してくれる土地……それが、北西部に位置するガリシア地方だ。近年は、サンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼の終着点としても知られている。隣国ポルトガルには首都マドリードより近く、話されるガリシア語はもともと、ポルトガル語にルーツがあるともされる。民謡にはバグパイプが用いられ、スパニッシュケルトの伝統を持つ。
 このガリシアと、北海沿いを東に行ったアストゥリアス、この辺りから出稼ぎに出た人のことを、アンダルシア人はファルーコ(女性形はファルーカ)と呼んだ。「フランシスコ」の愛称、との説もある。彼らが口ずさむ歌の調子は一見メランコリーでありながら、なぜか人びとの心をとらえた。20世紀初頭ギターのラモン・モントージャ、踊りのファイーコがファルーカに新たな命を吹き込んだ。