【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】 第8回 カーニャ

2024.01.9

★Comentario
 カーニャ、と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。アンダルシアの河べりにすっくと立つアシ? 暑い盛りに喉を潤してくれる、よく冷えた生ビールあるいはシェリー酒? それとも、古色蒼然としたリフレインを伴う歌の調べ? 人によって連想するものはさまざまだろう。
 このカーニャ、一般の単語としては「棹」「杖」の意味も持ち、中南米に行けば「サトウキビ」の意味ともなる。そこに共通して流れているのは、まっすぐ伸びた棒状のもの、というイメージ。つまりカーニャとは、直線状の形をした伝統的な味わいのもの、ということになる。そう思うと、フラメンコにおけるカーニャが、どこか捉えどころのない直線的な音運びを持ち、ドラマティックでありながらソレアやファンダンゴのようにぐっと胸に迫ってくる感じとはいささか趣きを異にする曲種となった理由がわかる気がする。実はその歴史はたいへん古く、19世紀前半の宴の情景を描いた文献にも、すでにカーニャの名前が現れている。最初期のカーニャは単独で奏でられていたが、時が下るにしたがって、やはりアンダルシアの古謡であるポロあるいはソレアと組み合わせて演じられるのがスタンダードとなった。まさに、歌は世につれ、といったところだろうか。