【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】 第7回 ブレリア

2023.09.29

★Comentario
  フラメンコの代名詞ともいえる、12拍子のリズム。6/8拍子と3/4拍子の混合拍子であるこのリズムは、しかし実は、フラメンコ固有のものではない。イベリア半島には昔から、このリズムを持つ民謡が各地に存在していた。またクラシックの作曲家たちもこのリズムに心惹かれ、さまざまな音楽を世に送り出してきた。ホアキン・ロドリーゴの『アランフエス協奏曲』第1楽章、マヌエル・デ・ファリャの「モーロ人の織物」……後者はフラメンコにそのまま転用され、ソレアまたはブレリアとして活用されている。
 それを可能にしているのが、クアルテータと呼ばれる汎用性の高い8音節4行詩、そして12拍子のリズムだ。ちなみにゆったりとしたソレアが「カンテの母」と呼ばれるのに対し、快速調のブレリアは「踊りの娘」と呼ばれたりもする。その語源は舞曲の名「ボレロ」とも、「からかい、あざけり」を意味する「ブルレリア(burlería)」ともいわれる。いずれにせよ、そこにはフラメンコのエッセンスが詰まっている。また、往々にして楽器を用いず机などを拳で叩いて伴奏する“アル・ゴルペ”というスタイルも一般的。そこにこもる野性味は、身ひとつで大陸を越えてきたヒターノの姿をほうふつとさせる。