【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】
第6回 ファンダンゴ・デ・ウエルバ

2023.06.30

★Comentario
 セビジャーナスと並んでフラメンコに取り入れられ定着した曲種、それがファンダンゴ・デ・ウエルバだ。
 ファンダンゴそのものは、もともとスペイン全土にたくさんのバリエーションを持つ民謡。「ファンダンゴ族」と称される民謡が各地に見られ、幾つかのものは地名を冠して呼ばれる。マラガの「マラゲーニャ」、グラナダの「グラナイーナ」、ロンダの「ロンデーニャ」と言えば、ピンと来る方もあるだろう。そうした民謡は往々にして踊りを伴う。スペインの民族舞踊は、男女が組になるパレハ(ペア)の踊りが主流。ファンダンゴ、ホタ、ボレロ、セギディーリャ、いずれもそうだ。カスタネットが用いられることも多く、踊りに華を添える。それらの民謡はやがて宮廷に届き、スペイン古典舞踊の一翼を担うに至った。
 そうした中でファンダンゴ・デ・ウエルバは、特にアンダルシア西部ウエルバ地方の民謡を指す。ウエルバは、アンダルシア8県の中でいちばん西に位置し、決して華やかな県とは言えないながら、マリスマと呼ばれる湿地帯から山岳部まで起伏に富み、国内最大の聖母巡礼祭であるロシオ聖母の聖堂や、心優しい詩人と小さなロバの交流を描いた散文詩『プラテーロとわたし』などで知られる。そしてフラメンコ愛好家には最大の宝物、それが、数十種類あるとも言われるファンダンゴ・デ・ウエルバなのだ。