【濱田吾愛の『Fuente del Cante』~カンテの泉~】第5回 ガロティン

2023.03.31

★Comentario
  タブラオの前身カフェ・カンタンテが流行した19世紀末から20世紀初頭、フラメンコ界にも新しい波が訪れた。ひとつは、ヒターノ(ジプシー)の専売特許だった市場に、非ヒターノの人びとが次つぎ参入したこと。もうひとつは、新たなレパートリーの広がりだ。その流行りに乗って時代の華となったのが、ガロティンだった。ユニークな曲種名の由来は今ひとつはっきりしない。農作業に使われた棍棒(garrote)の縮小辞で、聖ヨハネ祭に使われる拍子木がgarrotínと呼ばれたという説は、ガロティンのリフレインに“vera de San Juan(聖ヨハネ様のそばで)”というフレーズが多用されていることからも説得力がある。しかし実際踊りにその拍子木が使われるわけではない。由来は謎に包まれたままだ。
 曲調は明るく野趣に富んだ4拍子。伸びやかな雰囲気は、どこかバグパイプの音色をも思わせる。ケルトの伝統を持つガリシア地方にルーツを持つといわれるのも、その辺りから来ているのだろう。一方、カタルーニャのヒターノが広めたとの説もある。それはコラムで述べるように、バルセロナ出身のカルメン・アマジャの演唱によるところが大きいだろう。いずれにせよ、チャーミングな味わいをたたえた曲種であることは間違いない。